バッカスについて/海野小十郎
 
手紙も使徒パウロの傑作といえる書簡だが、不心得にもわたしはキリスト教から遠く離れて酒神バッカスのことなど考えている。別にヘブライ人への手紙が気に入らないのじゃない。
 ヘブライ書は幾度も読んだ。今でもなおへブライ書はわたしにとって新鮮であり示唆に富み芸術の香りも高い。しかしギリシャ神話も見逃せないのではないかとも、少年のころ読んだ幼少向け「ギリシャ神話」がとても印象に残り続けている。
 さて、そのバッカスの絵であるが。思うことは、誰かバッカスのことを真剣に考察する人であれば、こんなバッカス像を描き、そこへバッカスについて思い巡らす人が来て見るならば、わたしのような感慨を得て、いやこれこそバッカスだと考えたであろう。だがこの絵が誰が何時描いたものかも注意せず。だが絵だけは今もまざまざと思いに浮かべることができる。もし誰が描いたか何時ごろのものか知っている人があったら教えて欲しい。

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