バッカスについて/海野小十郎
バッカスについて
ある日展覧会で奇妙な絵を見た。バッカスと題する絵である。中年過ぎの上半身だけ裸の小太りの男の絵。ダンディとか洒落とかいうところは少しもない。そして思ったこれこそバッカスだと。フランドルかあるいはバルビゾン絵画展であったように思うが、わたしもこれといって秩序もなく、絵を見るのだから、或るときには若冲や大観をゴッホを見、ある時には場末の小さな画廊で思いにふけることもある。といった具合に絵なら何でも見てやろうと言うわけだ。
とにかくそのバッカスの絵がいっまでも心に残る。今日も教会に出席してヘブライ書の講演を聴きながらこのバッカスの絵について、思いはめぐる。ヘブライ人への手紙
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