濡女/佐々宝砂
 
闇に紛れてゆらり現れ。
夜だけ這い出る砂浜に見えぬ風紋。
太い蛇身にアンバランスな白い細首、
音も立てずに進む。

誰が姿を見たというか。
その身を見れば命はないというに。
赤いであろう唇から
こぼれる舌を誰が見たというか。

濡女は暗い浜を進む、
どこに行くあてもなく、
誰に出会うでもなく、

濡女に出会わなかった者が、
濡女を見たかのように語るがゆえに、
濡女は這い進む、誰もいない浜を。

ものすごくひさびさに「百鬼詩集」

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