83ばあちゃん/あすくれかおす
 


おばあちゃんは83回目の誕生日だった

小さくて肩がしぼんでみえた

年の数だけ抱きしめたなら

笑って消え去りそうだった

琥珀みたいにさらさらと




83分の1回だけ

そっとその手を握ってみた

あの頃は貧しかったのよ、とつぶやきながら

縁側で見えない列車と夜を見つめていた

星々を線路に敷き詰めて




8と3とで11本ね

説明をしてから火をつけた

ろうそくの灯りが息吹きを待っていた

たとえそのせいで消えてしまうとしても

ひとつひとつが今をあたためていた




ケーキは甘いのねえ


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