引っ越すひと/恋月 ぴの
 
一枚の写真のなかで私
笑っていた
卸したての制服は似合っていないし
表情もなんだかぎこちない

引越しの準備とかで慌しい最中
久しぶりに開いてみた
アルバム
こっちへ出てくるときに母が持たせてくれた
高校三年間の思い出が詰まった
一冊のアルバム

赤い表紙を一度も開くことは無かった
あの頃の私を忘れようと
精一杯の背伸びでもしていたのか
置き去りにしたかった
忘れようとしていた

だけど私は私に過ぎないのだと
素直に認める難しさに立ち往生したまま
この四年間、何一つ変えられなかった

もう無理しなくとも良いんだよね
どんなに遠く離れていても感じられる
母の優しさは気付かせてくれた

私が私で無くなる夢を追いかけるよりも
大切なものがあることを

見守っていてください

もうしばらく私なりに頑張ってみます




戻る   Point(25)