桜の街/umineko
 
薬で眠る
あなたの一日は
たぶん
誰とも違う一日

ときどき
あなたは目を覚まし
ありもしない
歴史を説いて

目が合うと
もういい、とか
すまんのう、とか

もう
語り尽くしたか
最近は
無言で見上げるだけで

ただ
瞳はあくまで澄んで

ほら
もう3月です
桜も
もうすぐですね、って
聞いているのか
いないのか

マスク越しの
あなたの頬は
見事に痩せ焦がれ

マスクと
頬の隙間から
規則正しい
呼吸が漏れる

私たちの一日と
おそらく
別の方法で
あなたの時間は刻まれて

まだ
秋の夕暮れの
ポプラ並木に落ちる夕陽を
あなたは歩いているとするなら



なんて告げた私を
あなたはどこかで笑って欲しい

だんだん
変わっていきますね

この街は
ずっとずっと秋ですね






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