午後/ヨルノテガム
 




男は紅茶を喉へ落とす
砂漠に水をこぼしたようにしみ入ってしまった
空になったカップの底を
クリクリとした瞳が泳ぎまわる
やっと香りが男の鼻腔へ回り始めた

頑丈な指が狭苦しく取っ手にまとわりつく
柔らかな白い陶器と喧嘩してるみたいだ
飲み干す前から力はみなぎっている
男はカップを斜めにして、すすり終った
太い管の首は一段と盛り上がり
食べれるのであればカップをも砕き味わおうと
口唇の上で様子を窺う

ほんの数秒で
紅茶は身体を2周半ほど駆け巡ったのだろう
カップを皿の上へコトリと置いて
男は脱力から戻れなくなった みるみるうちに
気と身体はしぼんで消え入る

停止というべき余韻へと浸りつかって
男はしばらく骸骨になってしまう












戻る   Point(4)