もう終わった話/松本 卓也
その能天気な声
できれば二度と聞きたくない
開口一番閉口せざるを得ないほど
無残にも引き裂かれたのは
一時と言えども夢見た優しさで
ショッピングモールの喧騒で
知ることはないだろうけれど
僕の声は確かに震えた
決して懐かしさや愛しさじゃない
何故君は再び現れたのだろう
このまま消え去ってくれれば
多少なりとも美しい想い出に埋もれ
やがては掻き消えて行っただろうに
ただ冷たすぎる風が
春はまだ遠くで燻っていると
素っ気無く告げている
君にとって僕の存在が
どんなものであったかを
思い知らされた夜
涙の代わりに零れる溜息
せめて雪でも降ってくれれば
足跡が隠せるというのに
街灯が明るすぎて
何処に行けばいいのか分らない
戻る 編 削 Point(2)