もう終わった話/松本 卓也
 
その能天気な声
できれば二度と聞きたくない

開口一番閉口せざるを得ないほど
無残にも引き裂かれたのは
一時と言えども夢見た優しさで

ショッピングモールの喧騒で
知ることはないだろうけれど
僕の声は確かに震えた
決して懐かしさや愛しさじゃない

何故君は再び現れたのだろう
このまま消え去ってくれれば
多少なりとも美しい想い出に埋もれ
やがては掻き消えて行っただろうに

ただ冷たすぎる風が
春はまだ遠くで燻っていると
素っ気無く告げている

君にとって僕の存在が
どんなものであったかを
思い知らされた夜

涙の代わりに零れる溜息
せめて雪でも降ってくれれば
足跡が隠せるというのに

街灯が明るすぎて
何処に行けばいいのか分らない

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