3月の雪/
伊那 果
季節はずれの大雪は
なごり雪と呼ぶにはあまりに冷たい
ミディアムボディのワインでは
何一つ暖まらない一人部屋で
一夜が過ぎた
赤縁のめがねと
灰色のマフラーで
私を覆う
どんな風が吹いても
大丈夫なように
おそるおそる
開けた扉の向こうは
なんだとってもあたたかいんだ
木々の芽はまるで繭玉のように
まあるい夢を膨らませている
ほんのりと溶けていく雪の下で
精一杯の自己主張をしている
春はもう
見えているよ
心を溶かして
私を見て、と
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