鷺草のよう         /天野茂典
 
かいかなしみ おもんぱかりながら
 こんなかわいそうな子をつくるのは なんと罪つくりなことだろうと
 酒に酔っては 毎日のように泣き崩れる父をみるのは
 たまらなかった
 父は無意識だったとおもうが このトラウマは
 サボテンの棘のようにささってぬけない
 ぼくには子供がいない
 愛をしらない 世界で回る高速回転の独楽のように孤立している
 ぼくには子供がいない 世界があまりにもやさしいのでノアの箱舟に
 乗ってしまったのだ だが後悔しない
 それはぼくが選びとったマラソンランナーの孤独なのだから
 ぼくは一個のDNAだ
 ただそれだけだ 遺伝子組み換えはしないのである
 ぼくはぼくだ 公式は単純なほうがいい
 女よ ぼくはあなたの切なる友人である誓って 


 2004・6・28











戻る   Point(6)