夜釣り/まんぼう
 
コンビニで買ったパンと
手には古い釣竿
ヘッドライトを頼りに
必死でたどり着いた
飛沫にぬれる岩礁

これはいささか無謀ではないか

岩を砕く波の音におびえながら
一人地球の先端に腰かけて
茫々たる星の海に対峙する

おもいつきで死ぬ事もあるのだろう

天かける雲さえ白く照らすのは
極北からの疾風に
磨き上げられた白金の半球

それにしても清々しいのだ

この冴え渡る夜空は
億年の夜毎繰り返され

烏賊や蛸は鯵や蝦を捕らえながら
海胆や栄螺は昆布を食いながら
唖然として見上げたろう

また人も
100万年の夜毎
汗みどろで抱き合いながら
ふと見上げては
呆然と魅入ったであろう

今夜
流れる時間の端に腰掛けて
身震いしながら見上げているのは
あなたがたの不肖の息子です

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