さくらについてわたしはなにも知らないにひとしい/木屋 亞万
 
かわずが関節炎になりやすい季節
うぐいすは宣伝活動に忙殺され
太陽は黄ばんだ寝間着のまま
おがわはさらさらを研究している

野草はこどものやわらかい
残酷な手をおそれている
樹木は年々求愛を激化させ
愛の弊害で顔面洪水が相次ぐ
崩壊の季節がきたものの
大団円にはほど遠い

さくらのおそろしい顔は
幹の奥で閉じている
はかいの音を求めている
華が咲くのに音はなく
花の散るのに音はない
雨が降るのに音はあり
雪が散るのに音はでる

はるは心を壊していく
叩いても弾いても鳴らない胸
こころが壊れる音を教えて
屋根瓦わるる雨の日も
はじまりに耳をすますから
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