あおい蝶がまた産声を上げる夜中(そして執拗に水は流れ続ける)/ホロウ・シカエルボク
するたぐいのものではない…「俺の傷が見えるか?」「なに?なんのこと…?」君は夢を見ているみたいだ、俺がなにを問いかけているかなんて、きっと少しも理解することは出来ていないだろう
あおい蝶だ、あおい蝶が飛んでいる
オーブンレンジはキッチンでまた冷えていくのだろうなにかを慰めている
なにを捧げる、それ以上なにを捧げる?君が落としているものは降り過ぎた雨のようなものだ、受け入れられず、どこにも還らない…ただ、ただ、渇くのを待つだけの―サビの味がする君の四肢、ぬぐえるものならぬぐってやりたい、本当の君のやわらかさを俺は確かに知っているのに
あおい蝶だよ
あおい蝶が飛んでいるよぅ
君は立ち上がり、洗面へ向かう、俺はテレビを見ながら右の耳の上にいたそれを握りつぶす
叶わなかった赤子の顔が
手の中でいびつに歪んでいた
水が
流れ続けている
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