ブルース/いねむり猫
 
待ってる
あの悪魔がくれた 黒くつやつやした音
心なんてあざ笑う 悲しみなんて若造のくしゃみ
暴力が星空のようにくだけて 痣の消えることのない体に降り注ぐ
首をねじ切ってやりたいほどの怒りは 豆畑の泥に練り込んだ
目の奥の奥で 笑っている ただこの神から隠された一晩

自分の股間を焼き切る 灼熱のブルース
両耳を突き抜けて タールで塗られた壁板に縫い付けられるリフ
女の腰を見えないほどゆするミシシッピー・デルタの響き

ああ 何も聞こえないのに 地の底から這い出てくるブルース
マイクに叫んでいるおまえは もう首から上しか残ってない
客はだれももうおまえを見てない
おまえはブルースハープの 最後のうめきと一緒に 
おがくずの撒かれた床に ふるえる手が捧げたワンショットのバーボン
ひと時 むせるように香って 消える


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