午羽/木立 悟
切り取っては
別の空に貼り
せわしく曇り
鴉は鳴る
こわがりな子らのための菓子
運び馳せるものの頭上に
爪と牙と花の午後
交わることなく生き急いでいる
水の音は無く
立ち上がる雨のむこうから
思い出せない寝息のような
羽の音がひとつしている
目の前に居る人 居ない人を
じっと見つめる
かたちはどこへゆくだろうか
ふちどりは共に居るだろうか
溝の両側
重なる光
飛び立ってゆく
浴びている
桜色の爪
透る指
隠れた応え 鈴なりの息
寝床のなかの 無数の朝
反芻とも輪唱とも異なる径を
裸足の音は静かにめぐる
戻らぬものの洞に降り
積もりつづける笑みを見つめる
泣いている背に菓子は溶け
羽になり森になり揺れている
昨日以外の空の継ぎめに
遠く遠く鴉は鳴る
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