ポケット/mayaco
どうしようもなく大切にしてきたわけでないけれど
大人のポケットは暖かく
そこにしまわれていたのです
そう、
大勢の人と話をしながら
少しずつ自分を失いながら
久しぶりにここを訪れたのは偶然に近いものだったのに
あなたのポケットは柔らかく
始まりを思い出したのです
そう、
見上げるとそこに笑顔があり
同じ回数だけうつむいていた
大切にしなくても大切なものはそこにあったのに
私のポケットはだまったままで
それでも時間は流れ続けたのです
そう、
ポケットに手を入れると
なつかしいような温もりが
まだ何も終わっていないと告げているようでした
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