三月/音阿弥花三郎
東京の山中に梅花をさがす
そのための前夜祭がおこなわれた
きみは友だちと肴を集めた
ぼくはウィスキーと葡萄酒を用意したが
梅酒のないことを悲しんだ
宴たけなわ
酒と肴の上に
三月の雨がふりそそいだ
花の眠りをさますこの雨をぼくたちは祝福し
詩を吐きながら
サカズキを飛ばした
果ては春雨のくせにぼくたちよりも勢い付いて
深夜の街を酔いどれた
翌朝 東京の山中に梅はかたくななまでに蕾のまま
春をよぶ雨のなごりが靴をよごす
疲れたきみとぼくは岩の上にすわりこむ
きみのはしゃぐ声で気がついた
枯れた林の根元は
福寿草の満開だった
黄色いはなびらは山の斜面を埋めつくし
きみとぼくの足もとを埋めつくしていた
戻る 編 削 Point(2)