僕の大切なものよ/右肩良久
 
 君は震えて傾いでいます
 それが誕生という時間の持つスタイルだから

 僕も君と同様に傾いでいるけれども
 それはもうどうでもいいこと

 昨日見た父の遺骨の埋葬されている墓地の
 白木の卒塔婆も傾いでおり
 三羽の雀がおりました

 君の傾いた本質を肉体という形で
 僕は
 受け取ります。裸の君を
 初めての冬を越えた若木の芽のような
 剥き出しのペニスを目立たせて
 泣きもせずにゆったりと呼吸する
 生まれて間もない君を
 抱くんだ

 この朧の夜に
 僕はどこか遠い砂漠の幻から
 無理矢理に君を引き出した
 はるか以前の夜だか昼だかの
 吐き気がするほどありふれた生殖行為によって

 ごめんなさいありがとうごめんなさいありがとう

 傾いでいるからすべてが滑り落ちる
 逃れ得ない存在という様式に従って
 僕も
 僕の大好きな君も
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