創書日和「月」 往還/大村 浩一
創書日和「月」 往還
月に巨大な鏡を置いて望遠鏡で覗いてみた
レンズの視界のなかで望遠鏡を覗きながら手をふるのは
自分がするよりも少し遅れて手をふる
2.56秒前の私
無数の少しずつ前の私の映像が
地球を離れ月にはね返って地球に戻ってくるのを想像する
同じように
無数の私の姿が無窮の空に放射されている
死ぬまでに届かない場所のほうがずっと多い
その場所から眺めたなら
昼飯時に勝手に始まったTV中継が目の前で終るような感じだろう
* * *
そんな大袈裟なことをしなくたって
1枚 写真を撮ればいい
フレームの中に居るのは1秒ごとに過去へ遠ざかってい
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