屋上/結城 森士
 
搾り出すように
乾きかけの檸檬を味わっては、
突然ウォークマンの音量を上げて、
遠くの空に浮かぶ僅かな雲の欠片を見つめたりしていた。
澄みきった青空と自分との距離が隔たれたものに思えて、
一層惨めになった。

崩れ落ちた価値観と倫理観に
打ちのめされていた日々。
昼休みの屋上は僕にとって
まるで突き落とされた谷底だった。
守るべきプライドも作るべき未来も
微塵も無いように思えた。

始業のチャイムが鳴っている。警鐘のように。
それでも僕はウォークマンを鳴らす。
僕だけの為に雑音は鳴り響いている。

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