その夜の風に/風音
 
彼女は車を降りて
ドアを静かに閉めた。

結局はささやかで
しあわせな四年間も
こんなもの。

「彼とは別れたから」
玄関を開けるなり
母親にそう告げた。

「何で?どこが、なにが、あったの?」
母は彼女に問いをなげつけた。

「だって
海へ行こうって言ったら
ボーダーのシャツ着てくるような男だったのよ!」
「だから何だって言うのよ、たかが服じゃない」

「だって
ご馳走といえばステーキって思ってるような男だったのよ!」
「いいじゃない、どこがいけないの?」

「・・・結局私は彼をもう好きじゃないの」

呟いて彼女は
自室に引き取った。

窓を開けてその夜の風を思い切り吸い込む。

なぜか煙草の香りがする気がした。
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