覆面/黒川排除 (oldsoup)
。わたしはぎょっとした。その男は、覆面をしたその男は、わたしに詩を書くことを教えた人物だ、今わたしに詩を書けと命令した人物だ。男が眺め始めた画布をわたしは見ることが出来なかった。突然、目を背けたわたしの後頭部で音読が始まった、その男の声をわたしは知らない、音読だ、朗読ではなく、音読、まったく抑揚のない声で、わたしの詩がこの部屋の中に音響している、これがわたしの言葉なのか。まったく知識にない発音の中で、恥辱はまさしく恐怖に変わった。五体は痙攣を起こしたようにもがき始め、わたしは一目散に逃げ出した。顔に貼り付いた覆面を剥ぎながら。
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