服/葉leaf
 
強いられているのか。下着は上着を着ているのか、ただ人に着られているのか。

美しい人に宛てた手紙を出さないまま捨てた。そのとき僕は服を着ていた。最も古い記憶の中で僕は畑に祖父を見ていた。そのとき僕は服を着ていた。いつの間にか雪が降っていて、その複雑な舞が過剰に思えた。そのとき僕は服を着ていた。

どんな服だって昔は何も知らない布だった。とびきり美しい服になれると信じていた。だが裁断され縫われていくうちに、次第に現実の厳しさを知るようになる。服はグレそうになりながらも立ち直る。そして完成した服としてありのままの自分が愛せるようになる。

服を着るとき、服の文法に従う。服を脱ぐとき、服のイントネーションに気をつける。服屋には、服の辞書がある。服を着て街を歩けば、服は自ずと朗読される。洋服ダンスをあけると服が一行の文となって並んでいて、服の配列の意外性が楽しめる。

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