サークル/鈴木
 
ら僕は、この美しく台無しで愛おしい彼女を苦しませるような真似は二度とすまい、と心に誓ったのでありました。
 さて冒頭より五分前、僕は坂の下にあるアパートへ帰ろうと歩き出したわけです。終電に乗ろうとしてすれ違っていく酔いどれたちの顔を漠然と見ながら、恋人が今どうしているだろうなんてことを考えていました。はるか先輩は確かにいまだ憧れではあります。けれども今の僕を形成してくれたのは紛れもなく七海で、実存として自分と溶け合える唯一無二の人間こそ彼女でありました。すると、七海の顔が幻影として空中に浮かび上がりました――最初はそう思ったのです――しかしすぐにそれが現実に終電を目指して歩く七海であることを認め
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