サークル/鈴木
 
座った鈴木は生ビールと軟骨、つくね、しいたけを注文し、耳にかかった黒髪をくしけずりながら鼻をすすりました。「風邪?」「ああ、家から歩いてきちゃったしね――はるか先輩?」「さっきからあの調子」「そうなんだ」「っていうかなんで中野から歩いてきたんだ作文家風情のもやしが。電車で来いよ」「口の利き方に気をつけろ、コケシの生存権は法律で保障されてないんだから。創作が完成したので喜び勇んでさ」「マジか、どんなの?」「端的に表現すれば主人公がアイデンティティを失う小説で」「小説!」「はるか先輩こんばんは、お元気ですか?」「元気!」「それはよかった」「なめんな! 小説といえばな、かぶれ、さっき西島センセイと、私の
[次のページ]
戻る   Point(0)