サークル/鈴木
思うところあり心から同情の沸くことはありませんでしたが、空気を読んで、件の話題に関係あるなしに関わらず頷いておりました。すると始めは艶もかくやといった彼女の相貌と相好が次第に崩落し、突然けたけた笑いだしたかと思えば一転して沈黙を続け、ふけった妄想を調子はずれの裏声で述べ立てるという狂態を演じるころ、かつて憧れた人は台無しになってしまったのでした。
何度、昨晩の真実をぶちまけようとしたことか!
本当そうしなくてよかったですよ。思いとどまったのは、先ほど申し上げた「別の結論」が念頭にあったことで事態を対象化して観じることができた損得勘定の結果でありますが、何より、僕の握っていた真実が今となって
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