サークル/鈴木
 

 残った仕事は現幹事に電車へ乗ってもらう作業ばかりとなりました。「帰れますか」彼女は反応してくれません。「もしもし先輩」僕の肩に縋ってうつむいたまま動きません。じれったくなって耳元で叫びました「はるかさん!」。すると急に「なめんな! そしてさわんな!」腕を振りほどいたはるか先輩は、まだ力が入らないままと見えて、きちんと立てずにしゃがみ込んでしまい「びっくりした」などと呟きながら胡乱な視線をこちらに向け、また逸らして息を深く吐きました。「近くで叫ぶなよ息で耳ねぶられて気持ち悪いんだよ」「ああ」ようやく僕は悟りました。先輩もまた一年半前から僕の自涜を知っていたのです。知っていてこれまで平気なように汚
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