サークル/鈴木
 
しつつ彼は苛立った。何が主題だ。この冗漫な文体はどうだ。腋で胆汁がにじむような不快感を惹起させるではないか。第一、自らを小説の登場人物と仮定した言説は当初の構想にはなかったのである。上手く行かぬ叙述を詰るため、高田はるかが勝手に動いたのだ。おまけにこの場面の「文学かぶれ」という部分は、単語自体はある種の人物一般を指すものにもかかわらず文全体では特定の人物おそらく作者自身を指す書き方であり矛盾している。彼は歯噛みする。舌の先に垢が触れる。こめかみの鈍痛が肥大する。許せないのは西島匠と高田はるかである。再三の静止も聞かず奔放に動き、こちらのプランを次々と破壊していく。力不足といえばそれまでだが、オノレ
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