メール/パッサカリア/チアーヌ
 
端に、見たくない、醜いものが入り込んできた。
信じがたい思いで、俺はそれを見た。

俺を射る様に見つめる視線。どしゃぶりの遊園地。その中に立つ不気味な親子連れ。
ぶよぶよと太ったみっともないデブが、抱っこ紐で赤ん坊を抱き、傘もささずに雨の中に立ち尽くしている。
妻だ。
 俺はさすがに動揺した。
「なんだ、お前、何しに来たんだよ」
「ずいぶん、探したのよ。広いんですもの、ここ」
「だから、何しに来たんだよ」
「わたしもここへ来たかったの。それだけよ。でも、生憎、雨が降っちゃったわね」
妻は静かに言った。
 太った体に、安っぽい服が張り付き、余計に醜くなっている。バッ
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