美しい犬  〜ペロリーナさんへ〜/ましろ
 
美しい犬がいた

おばあちゃんが しゃべっても
おじいちゃんが ふらり通っても
見慣れない客の私が そわそわ頭を下げて
みつめても
じっとして

娘が話しかけると
ぺたんとした長い耳が
微かに動いた

私は大丈夫だから、そこの珍客と遊んでらっしゃいな。
切れ長の大きな瞳が
告げる

田舎の家族の団欒が染みついた居間に
美しい犬がいた
焦げ茶の艶めく肢体(からだ)をよこたえ

潤んだ瞳を覗き込むと
きらりと
ビロードの光りを放った

離れると
ふたたび瞳は潤んだ 沼のように
家族のいとなみを湛えて  
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