なみだ投げ/木屋 亞万
思いきり泣いたので
結構貯まった涙の玉
業者に売りさばくのも
良いのだけれど
私を悲しませたヤツに
思いきり投げ付ける方が
良いのだ
仕事終わりに呼び出した
人気の無いオフィスで
同僚に玉を投げ付けた
何故だかすぐに泣けてきた
彼も謝りながら泣き出した
大きく振りかぶって全力で
涙の粒をぶつけ合った
互いの額や頬で弾ける粒は
雪の花のように散っていった
疲れが見え始めた頃
私の右目から赤い粒が
ひとつ零れ出て来た
血かと思ったらハート型の
割れかけた粒でお菓子の
幸運を呼ぶ粒のように
手の平に残った
これは投げてはいけない
私の恋心そのものだから
半分に割って二人で食べた
頬が引き締まるくらい
甘酸っぱい味がした
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