ひとつ とどろき/木立 悟
巡るうた追う
海の手の甲
丸い穂先と
風の尾の火
打ち消しあう火
打ち消しあう火
うたの切れ端が花になり
火を免れて明日になった
午後のこがね
夜の蒼
祝福も
喝采もないしあわせ
一度生まれ出たものを
消し去ることはできなかった
見えない修復のちからは強く
あらがいは折れて地に散らばった
心のないまま
前へ進んだ
海に着く火が沈まずにいる
光が星を見つめている
手は海に落ち空に落ち
波は花と波をくりかえす
巧妙に隠されたものを貫き
光が光に降りそそいでいる
問いなく応え
応えなく問い
空を編みあげる縦の波
柱は高く 海につらなり
はざまを震えに染めつづけている
波の音はなく どこまでもなく
問いは響き
応えは響き
灰のなかの火
甲を流れ
火に火をつなぎ
うたはつづき
まことはなく
まことはあり
変わりつづける頁をもとめて
海は海をめくりつづける
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