冬色/松本 卓也
 
まどろみの中で聞いた
雨音は幻だったのかな

差し込んできた光に目を覚ます
少し強い風が吹いているようで
外では木々がゆらゆら踊る
当たり前に包まれた休日の昼

迷惑メールの受信履歴が
独り身の侘しさを引き立てるだけ
昨夜浴びるほど酒を呑んだのに
寒さに震えて眠りについたっけ

何だかとても悲しい夢を見た
目覚めるまで気付かないほどにリアルで
何度思い返してもナンセンスな
温もりが通り過ぎていくだけの
寂しい寂しい夢だった

微かな寝癖をそのままにして
近所のコンビニでパンを買う間
少しだけ視線を気にしていた

誰も見てなんかいやしないし
そんな事は分りきっている
ただもし何かの間違いがあって
居るはずの無い誰かが
見守ってくれていたとしたら

路面の窪みに溜まる雨水
浮かぶ枯葉を一摘みして
掃き集められた落ち葉の山に
帰り際そっと置いてみた

積もる乾いた冬色が
少しだけ紛れるような気がして

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