ひとみ はなびら/木立 悟
何もないものばかり響いて
ひとつ さくりと
離れゆく手
玩具とともに
しまわれる手
岩の鏡が音を集め
門のかたちに積み上げている
水音の色を見つめる目
かたちのむこうの陽に照らされる
死者を燃す火
切りはらわれた木
無音のまぶしさ
雨のぼる虹
雨のぼる指
無言の道
悲しい応えがひとつだけあり
辿りつくようには辿りつけない
右目の羽が左目に生え
しきりに胸のはざまへ移り
今はわからぬ応えにはばたく
とどこおるもの
ときほぐすもの
隔たりに満ちては隔たりをひろげ
明るくかがやき去るものたちの
小さく小さく唱う声を聴く
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