終わる、世界が、始まる/木屋 亞万
触れてみたい
けれどまずは手を繋ぎたい
意思を持って
動こうとすると
暗闇が煮立ち始め
夢の鮮明さを蝕む
瞼に雪片の流れが蘇り
目を開ければ君の顔
睫毛と髪に雪を乗せた
心配そうな君の顔
大丈夫?どうしてこんな
と続く言葉が聞き取れない
君の唇と瞳の微かな潤いが
感覚を完全に支配していく
僕に流れた年月が一周し
次がまた始まる
新たな心の波を感じ
新たに増えた人格が一人
異物感に戸惑ったけれど
ほのかに周囲が温かくなった
春が来て団長は故郷へ帰り
僕は夜の滑り台で声を
確かめながら愛の歌を唄う
君は今日もコンビニへ
行く途中にここを通る
滑り台はまだ凹んだままだ
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