セーター/
草野春心
やさしさに躓いて
長い冬はセーターを編む
遠ざかる音楽に耳を澄ませば
寒さのなかにあのひとの温もり
息苦しさは募りゆく
はっと目覚めるコーヒーの朝
ひとのせいにすることばかり考えて
時計の音に身構えた日々
世界は知っていたのでしょう
繋いだ手と手が離れてゆくこと
ずっと前から知っていて……
語らず背中を押したのでしょう
自分のための時間があること
忘れたふりをしていただけ
長い冬はセーターを編む
私はそっと袖を通した
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