ひとつ まどろみ/木立 悟
流れついたものが
砂になりながら
岩とこだまを見つめている
鉄の文字 糸の文字
海をつなぐ
むらさきの道
夜の上に呼ばれ
夜の上に呼ばれ
いつのまにかもどり 忘れる
手のひらに残るものは
目に痛くかがやく
思い出せないかたちのもの
忘れたくなかった光の音
指のはざまに満ち
真昼の奥の
こがねに醒めて
ただひとつ忘れずにいた
瞳のかたちを空に描く
白を震わせ
管の風が吹く
息のちからが
円錐になる
長いあいだ
聞くことのできなかった音が
聞こえくる
りんご 鳥 針
ふちどるたびに
光は変わり
残る空白
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