環状感染症候群/渡 ひろこ
て
ますます症状が重くなるので
鏡をいろんな角度に置いて
病状の進行を
知らしめようとしても
焦点が合わないらしい
だんだん
ワタシの方が気に病んで
どうにかしようと
躍起になっていった
これまで何の迷いもなく
磨いてきた
“美徳”という器を
目上のカノジョがことごとく割って
対岸まで行こうとするのが
耐えきれなかったのかもしれない
(放っておけばいいのに…)
気づいたら
ねじれた義憤を
呑みこもうとして
呑みこめず
反芻しているのは
ワタシだった
ふと
鏡に映った自分の姿を見ると
薄紫のモヤモヤした
輪が
頭に巻きついていた
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