虹を見ていた/未有花
 
虹を見ていた
空に放物線を描く光の帯を
虹を見ていた
あの日君と眺めた七色の輝きを
虹を見ていた
ただ黙って見ていた
思い出は今も胸に消えない懐かしい橋をかける

あの日僕らは雨上がりの森を
虹を目指して駆けて行ったんだ
虹は森の向こうで僕らを呼んでいた
道はぬかるんで靴が汚れてしまったけれど
僕らはぜんぜん気にならなかった
ただ空の向こうにかかるあの虹に
一刻も早くたどり着きたくてひたすら走り続けたんだ

森を抜ければ虹にたどり着く
あの時の僕らはそれを信じて疑わなかった
そしてあの虹に触れることができたなら
夢は叶うとそう信じていたんだ
けれども森を抜け
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