「 裂けるため、の眼の。 」/PULL.
 
じりと血走った太陽が昇り、足跡をひとつひとつ、消してゆく。



七。

 浜辺に打ち上げられた家具を拾い、部屋を、つくる部屋はどこまでも続き、やがて入り江があなたの、家になる。



八。

 熱く、ゆっくり沸かした湯の中で、寝葉樹の葉はふるくると回り、葉を開く。裂け眼はじっと、それを見つめ、煎れられるように湯の中に、とけ込んで、ゆく。



九。

 雨脚の、かかとを踏んで、あなたは今日も、転びます。眼は雲よりもたくさん雨を含むから、あなたは今日も雨を、降らしました。
 さあ立ち上がって瞼を閉じて、波の音のする方へ、裂けて、歩きなさい。



十。
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