ホースで水をかけてくれ/プテラノドン
 
 真夏の夜だ。
蛙の鳴声。その、むせ返るような自由さ。或いは、
青春の悪徳を手に―体育倉庫から盗んだバレーボールを片手に、
的外れなコートの上に、田んぼの中にぼくらは突っ立っていた。
「試合より緊張するよな」と友人は笑った。それから、
退屈の象徴のように思えてならなかった電車めがけて、
バレーボールを投げつけた。その瞬間にもう、
夜空に浮かぶ月が三つに増えて、
はっきりとぼくらは息を呑んだのだけれど、
電車は夜のテカり、粒々の光に向かって、
休み足りない乗客たちを連れ去って、
その間も田んぼに二つ、はじかれた月が落っこちて、
蛙さえもしばらく黙りこくって、
ぼくらの奇声だ
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