子供たちが鳥に戻る日(風の強い日)/Utakata
く友達を眺めている
長い時間の後で少年と少女は
手を繋いだままでゆっくりと波打ち際へと進んでゆく
踝を波が洗うあたり
一度だけ陸地のほうを振り返ると
少年と少女は魚に戻って海へと潜る
指を失くしても
鰭を触れたまま
***
日が暮れるにつれて
風はだんだんと収まっていく
天気予報が明日の穏やかな曇り空を告げる
街中では
清掃作業が速やかに開始される
明日は木曜日なので
子供たちも学校の準備をしなければならない
清掃車が効率的に市内を巡回する
教師たちが明日の授業内容を作り始める
7.
かつて ひとりの少年とひとりの少女だった
二匹の魚
海の深い場所で静かに寄り添いあう
出席簿の中の空白がやがて忘れられていく
空気がないので
もう風の強い日を待つ必要もない
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