さしすせそ、/望月 ゆき
 
で羽化してゆく蝉の夢を見る
そうして、救われることと滅ぶことは
いつも正比例していく
朝がきたから起きます、という号令を
誰もかけたがらないので、いつまでも朝が来ない



     *



さしすせそ、
をくりかえし発声する
伝えたいことなんて、それでじゅうぶんに足りた
土に、体が半分埋まっている
生命のひとつひとつに名まえをつけるというゲームの
かけがえのないパーツであるという不自由を
叫び、そして祈るように
また わたしたちは
さしすせそ、
をくりかえしている



   

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