さしすせそ、/望月 ゆき
で羽化してゆく蝉の夢を見る
そうして、救われることと滅ぶことは
いつも正比例していく
朝がきたから起きます、という号令を
誰もかけたがらないので、いつまでも朝が来ない
*
さしすせそ、
をくりかえし発声する
伝えたいことなんて、それでじゅうぶんに足りた
土に、体が半分埋まっている
生命のひとつひとつに名まえをつけるというゲームの
かけがえのないパーツであるという不自由を
叫び、そして祈るように
また わたしたちは
さしすせそ、
をくりかえしている
戻る 編 削 Point(37)