方舟/はな 
 
こごえたよるのそらのむらさき
つまさきにこぼれる
ほしくず


金のからすは
さんぼんあし でした
ゆっくりと、月のまわりを、まわっていました
どこかの国のおとぎばなしの
おしまい のつづきで
誰も知らない月のうらがわのまちで
そっとたいようから
とびおりた、からす
あなたのかみのけは
そのときにすこし ちぢれたのですね


海は
凪をなくしました
あなたのむらさきがかったひとみは
空の奥で、ゆれて、
きっといつも足りていました
まばたきをするたび
燃えながらおちてゆく日の
こごえたゆびさきと
あたたかなほほを おぼえていました


朝の空港に
ゆっくりと飛来した 片翼の
あなたのひとみのなかに
燃えているよるの
ほしが 
ひとつ
おちてゆくのでした




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