方舟/はな 
 



1.「ナオタへ」

{引用=すこやかなよるに
知らないこと を
ふたりで 机にならべた
フライ返しで
ナオタは
ひとつずつ
ひっくり返した
ナオタは
ゆびがやわらかくて
おやゆびが 欠けていて
時折
きらめいている
なにもかも が
二度と訪れない ということを
知っているようなかおで
きらめく
きっと いろんな色がある
見落とされた欠片
ばかりで
できていた
かわたれぼしを見に行ったとき
藍色
すこしずつ 減っていたね
ねじれた
にび色の電車はもう
とおくて、
ずいぶん前に 春は
退屈な
ことばあそびのあとで
風は 呼んで 
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