もくれんのくも/たりぽん(大理 奔)
 
誰か、などとごまかすのはよそう
あなたを、思うときの空だ
湿った雪雲が切れていく
灰色の向こうに広がる薄い青
きっと強く、遠くのあなたを想っている
灰色と青色が近いのは空のせいだ

  往復切符は買わない
  同じ場所にしかかえれないから
  切符も買わずに飛び乗る
  生きるとか
  死ぬとかじゃなく
  辿り着くための旅だ

空も雲も月も照らされるものだから
あなたを想う心に似ている
照らされて無様な影を這わせる
この胸の奥の
満たされることがない風景

薄い青色の空には
きまって木蓮のかおりがする
(それは春の幻想)
南に流れていく
湿った雪雲の輪郭をなぞって
途切れとぎれに
思い出させる

僕は振り返らない
時折の気配にふり仰ぐだけだ
そして照らされた空が
湿った雪雲を流していく


戻る   Point(10)