もくれんのくも/たりぽん(大理 奔)
誰か、などとごまかすのはよそう
あなたを、思うときの空だ
湿った雪雲が切れていく
灰色の向こうに広がる薄い青
きっと強く、遠くのあなたを想っている
灰色と青色が近いのは空のせいだ
往復切符は買わない
同じ場所にしかかえれないから
切符も買わずに飛び乗る
生きるとか
死ぬとかじゃなく
辿り着くための旅だ
空も雲も月も照らされるものだから
あなたを想う心に似ている
照らされて無様な影を這わせる
この胸の奥の
満たされることがない風景
薄い青色の空には
きまって木蓮のかおりがする
(それは春の幻想)
南に流れていく
湿った雪雲の輪郭をなぞって
途切れとぎれに
思い出させる
僕は振り返らない
時折の気配にふり仰ぐだけだ
そして照らされた空が
湿った雪雲を流していく
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