蝶/poorguy
油絵の具の匂いが染み着くアトリエに
アゲハ蝶がゆらゆらと泳いでいる
埃に煙った裸婦像の眼前を
優雅に踊りながら
描きかけのまま破られたカンバスの上を
妖艶に舞いながら
アゲハ蝶がゆらゆらと泳いでいる
振り子の止まった柱時計が見守る舞踏会
この何も無い世界の中で独り踊るプリマドンナはやがて
舞台の片隅で大きな運命の網に囚わるる
ハサ ハサ ハサ と
渾身の力で抗う乙女は絶叫をあげ
突然に訪れた死の淵から逃れようとするのだが
やがて力無く
その動きはしなだれ
そして絶望する
原始の欲望を満たす為に現れ出でた毒虫は
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