私信/佐野権太
 
新しい雪の降り積もった
静かな屋根やねが
水平な朝に焼かれて
私の底辺をもちあげる

増幅する光の波が
うずくまる私の手をとり
青い影を洗う

そうして
裸にされてゆく、わたし
何度も生まれ変わる

*

不均衡な手足に戸惑い
憂うときも
季節は小さく流れて
樹々たちは
萌え出ずることを忘れない

雛たちは
目蓋の裏側に漂う
金色の繊維を追いかけ
やがて
思い思いのかたちに
羽を広げるだろう

柔らかくはりついた
前髪をかきあげて
どうか
あの人が笑えますように






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