二十九年すぎた頃からもっと恋しくなった/佐々木妖精
大きくなったらお父さんみたいになりたい
保育園で描いた父の肖像画を掲げて
恥ずかしがりながら言って
グローブみたいな手で撫でてもらって
四角い輪郭
プツプツの髭?
目?が三つ?
真ん中のは鼻か?
引き出しの落書きに
困惑しつつ
僕からぎこちなく
俺へのシフトチェンジを試み
俺デビューを正拳突きで飾る
いつの間にか
大山倍達のように
ヘッセのように
小沢健二のようにと
ガーガーいびきかく父を蔑ろにし
あんなつまらない大人になりたくないなんて
お決まりのことを思って
三島由紀夫のように
法学部へ進学して
数日間眠れず
飲まず食わずで向かえた
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