実験室37−C/塔野夏子
 
時折天井から記号が滴る

灰色の水槽の中には青白い都市が浮遊している

祭壇めいた台の上で
少年はくる日もくる日も
華奢な実験をくりかえす
時々淡いひとりごとを呟きながら

ほのかに漂う薬品の匂いは
図書館への道沿いに立つ樹々の
名前を知らない白い花の香りに
どこか似ていると思いながら

時折部屋の隅から隅へ流星がかすめ去る

プレパラートには遠くの丘の景色が挟まれている


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